昨今、超高齢化社会を迎えた日本において、嚥下(えんげ)障害、食事やツバを飲み込むことが思うようにできないを抱えている方が多くいらっしゃいます。
口から食事をできないということは、生きる喜びの一つを失うということだと思います。
また、嚥下障害が招く「誤嚥性肺炎」は、高齢者の死亡原因としても多くの割合を占めるため、嚥下障害は今後も積極的に取り組むべき問題となります。
こうした嚥下障害が起きてしまった方に対して、できるだけ早い段階でリハビリテーションを行うのは、歯科医師の役割でもあります。
リハビリテーションの語源(re habilitation)は、本来あるべきところへ回復させることを意味しています。
胃ろうにさせないように予防する事が大前提ですが、一時的に嚥下障害が起きても、戻すようにリハビリテーションを行う。
発音障害が起きた方に対して、麻痺を起こした患者さまの状態を元に戻す事です。
患者さまの自尊心を保つために、非常に大切なことだと改めて感じます。
当院顧問である稲葉繁先生は、40年以上も前から摂食・嚥下についての研究に取り組んで参りました。
顎関節症の患者様に舌の圧痕や歯の形の圧痕、口蓋鄒壁(上あごの口蓋のひだ)の肥厚を見つけたことがすべての始まりでした。
当時は、嚥下という言葉さえ認知されていない時代で、論文や学会発表を行ってもほとんど反応がなかったと言います。
・咀嚼・嚥下・発音
これら3つの機能を育てるには、哺乳行動が大きく影響していることに気づきました。
さらに研究を進めるうちに、間違った嚥下機能をしているとさまざまな障害があることがわかりました。
そこで、発案したのが、ラビリントレーナーという嚥下器具です。(現在、エントレという器具も販売されております。)
舌と唇、そして嚥下に必要な筋肉を鍛えることができる嚥下器具の発案には、40年もの間、研究を積み重ねてきた歴史があります。
(植木式哺乳器・写真は、日本で最初の哺乳瓶です。チューブはすでにボロボロになっていますが、赤ちゃんが自分の力で吸い込むことができます。)
現在、日本では年間およそ8,000人の方が誤嚥性肺炎、つまり食べ物による窒息で亡くなっているといわれています。
そのほとんどが65歳以上の高齢者です。
1971に出版された、Daniel Garlinerの Myofunctional Therapy(筋機能療法) の本は稲葉先生の大切なバイブルです。
Myofunctional Therapy の原点です。
今でも、この手法を応用して嚥下の治療に取り組んでいます。
乳児の哺乳においても、ドイツはかなり進んでいます。
Dr.Hinz
以前、ケルンで開催されたIDS(International Dental Show)でも、子供の舌壁を治すのにとても有効な器具が紹介されていました。
日本では、残念ながら紹介されていなかったので、猛烈に買い占めて参りました^ ^
乳児の哺乳の問題と、高齢者の嚥下問題は一見関係がないようで、切っても切れない関係です。
稲葉歯科医院では、“かみ合わせ”、“テレスコープ義歯”、“総入れ歯”、“摂食嚥下”を4本の柱とし、患者さまに最善の医療をご提供させていただいております。