こんにちは、稲葉歯科医院に勤務しています小西浩介です。
前回に引き続き、ドイツ研修の後半をレポートしたいと思います。
前半はハイデルベルク大学病院の実りある研修でしたので、そこで得た知識や情報に結びつけるべく、そして世界全体の歯科医療の流れを確認するためにIDSに参加致しました。
IDSとはInternational Dental Showのことですが、2年に一度ケルンで開催され、世界中の約60社の歯科メーカー2000社以上が出展し、革新的な医療技術や医療機器を競い合う世界最大の展示会です。
IDSの開催場所の近くにケルン大聖堂がありましたが、その外観も内観も非常に繊細かつ堅牢な造りから、ドイツの歯科医療にも結びつくものを感じました。
IDSの会場に入りました。
その広さは16000平米を超え、下の写真のような会場がいくつもあり、とても数日で回れない大きさです。
各社、世界で著名な先生方を講師にしてセミナーを行っており、素晴らしい内容をレクチャーされていました。
また、ライブデモも行っており、どこのメーカーもレベルの高い医療技術を実際に行うことでアピールしていました。
私は今回、ハイデルベルク大学病院の研修内容から得た情報と知識を結びつけることと、以前よりリサーチしたかった点に目的を絞り参加しました。このレポートでは、以下の2つを簡潔に報告致します。
1つ目は、コバルトクロムを用いたテレスコープの技工技術、2つ目は、デジタル時代における顎機能検査装置についてです。
まず、コバルトクロムですが、現在私はほぼ全てのテレスコープ症例(コーヌスクローネ、レジリエンツテレスコープ、リーゲルテレスコープ)で、白金加金を使用しています。
ハイデルベルク大学のランメルスベルグ教授に、コーヌスクローネのコバルトクロムの臨床応用のヒントを教えていただきましたので、コバルトクロムの臨床応用について各社に直接確認をとっていきました。
こちらのドイツの会社は、従来の内冠外冠を鋳造技術で製作するのではなく、すべて機械制御によってミリング技術でテレスコープ製作を行っていました。
担当者に許可を得て、模型上で実際の適合性を確認しましたが、私が日本で行なっている鋳造技術と変わらないどころか驚くような適合性を達成していました。
実際に製作している歯科技工士でもあり、機械工学の専門家に様々な質問をしましたが、全て実験を行いデータを採って根拠のあるもとで行われていました。
ハイデルベルク大学病院でも感じたことですが、ドイツでは非常に臨床と研究が密接しており、それを十分に臨床に応用していると感じました。
また、こちらは違うドイツの会社ですが、先程と同じようにすべて機械制御によるミリング技術でテレスコープ製作を行っています。
こちらも適合性を確認しましたが、先程と同様素晴らしい技術でした。このように優れたテレスコープ技術を有する会社が多数ありました。
そして、稲葉歯科医院の院長である由里子先生が放電加工機を導入するきっかけとなったSAEという会社も視察しました。
この放電加工機は、従来の鋳造技術でテレスコープの内冠と外冠を合わせるのではなく、電極を応用して、内冠と外冠を合わせる技術です。
これにより、硬くて加工が難しい金属、例えばコバルトクロムのような金属でも、精度を高めた適合を得るという加工技術です。
この技術でテレスコープやインプラントの上部構造にも応用することが可能となります。
今後、稲葉歯科医院で、この放電加工技術を応用したテレスコープが患者様に貢献できるよう願っています。
また、顎機能検査装置についても各社確認してまいりました。
私は臨床でカボ社のアルクスディグマ2を用いて、顎位や顎機能の客観的評価を行なっていますが、今回新しいアルクスディグマ3が初めて発表されていました。
ワイヤレスになっていたり、送受信の仕組みなどの改変が行われ、より進化していました。
カボ社以外にもゼブリスや各社視察してまいりましたが、私は臨床でカボ社の医療機器を用いていますので、その連動を考えれば、今後日本で発売されるアルクスディグマ3を待ちたいと思いました。
そして2日間のIDSを終えて、カボ本社にお招きいただき、バーデンヴュルテンベルク州のビベラッハまで、ケルンから4時間以上かけて向かいました。
私が使用しているほとんどがカボ社の医療機器ですが、特に歯の切削機器に関してはバーの軸ぶれが少なく確実な冷却機能を持つハンドピースは、カボ社を一度使用するとほかのユニットでは治療ができなくなるくらい素晴らしく、患者様そして歯科医師にとって有益であると私は考えています。
カボ社の様々な医療機器の製作の裏側や、コンセプトを勉強させていただきました。そして日本に帰国するため、ミュンヘンに移動しました。
今回、IDSへの参加、そしてハイデルベルク大学病院での研修を通じて、大変良い影響を受けることができました。
ただ、これで満足するのではなく、早速臨床に応用するために次の目標を設定し、行動することを決めました。そして今後、私の治療を行う患者様に還元していければと思います。
2回に分けてレポートに書いた内容は、ほんのごく一部ですので、患者様のみならずIPSGのセミナーや学会等で、今回の情報を歯科医師や歯科技工士の先生方とも共有させていただき、日本の歯科界の発展に少しでも貢献してまいりたいと思います。
最後になりますが、今回稲葉繁先生より日頃より教わっていた様々なことを、このドイツ研修で活かすことで多くの実りある結果を得ることができました。
これを機に、今後は定期的に海外に足を運び、世界から情報を取り入れて自分の臨床に活かしていきたいと思います。
そして、今後も何事も自分のプラスになると信じて、どんなことでも積極的にかつ前向きに進んでいきたいと思います。
この度は、レポートをご覧いただきまして誠にありがとうございました。
稲葉歯科医院 小西浩介